トルストイと仏教1
≪世界の教師の苦悩≫
NHKの名作ドキュメント
の一つ【映像の世紀】
私達の生まれた20世紀を
残された映像資料でつづり
ます。
その最初に登場するのが
レフ・トルストイ
ロシアの駅におりたった
彼を群衆たちは熱狂的に取り
囲みます。
戦争と平和、
アンナカレーニナ
など世界的文学作品を残し
たトルストイは
「世界の教師」とまで
仰がれていました。
ところが
何不自由のない生活を
送っていた彼でしたが、
45歳過ぎから52歳まで
の7年間、一切なにも書け
なくなってしまいました。
その沈黙を破って発表され
たのが「懴悔」という本です。
この本は、他のトルストイ作品
に比べて大変薄いものですが、
当時のロシアに与えた影響は
甚大であったといわれています。
それは、トルストイ自身が、
「ひとは、なぜ生きるのか」という
人生の意義に悩み、
世界中の本を読み漁り探し求めた
苦悩が描かれているからです。
彼は、その解答を、それまでの
人間の知識の中に求めました。
そしてあらゆる人間の知識は、
2つに分けられる、というのです。
1つは科学もう1つは哲学です。
しかし、このいずれにも、
人生の解答はなかったと記しています。
科学は生きていきための手段ですから
科学の中に生きる目的はありません。
哲学は何のために生きるのかを
論じていながら
問題提起が形を変えるだけで結局、
答えに行きついていないというのです。
知識では解決できぬと知ったトルストイは
悲嘆の中から周囲の人々の生きざまを観察することで、
人生の意義を見出そうとしました。
人々の生き方は、四通りでした。
第1は、無知無識の道。
第2に快楽の道
第3は自殺の道
第4は、弱気の道
【無知無識の道】
人生の意味について考えることも
振り返ることもしない生き方です。
何のために生きる??
そんなことどうでもいいじゃん
なんでそんなこと考えるの??
という生き方です。
トルストイはこういう生き方を
ある意味では幸せだといっていますが
自分は、もう戻れないといっています。
一度、この問題に気がついてしまったら
もう、何も考えず生きていた
あの頃には戻れない
のです。
アルベール・カミューは
人間の奥底には、生きる意味を
「死に物狂い」で知りたがる願望が、激しく鳴り響いている
といいます。
その願望に気がついてしまった
トルストイは
どうしても生きる目的を知りたい、
いや知らなかったら生けなかったのです。
仏教に真実が・・
そのトルストイが、唯一「懴悔」の中で、
「これこそ、論じあう余地のない真実だ」
と述べているのが、
仏教に説かれた人間の実相のたとえばなしです。
世界の文豪をしてまぎれもない真実と
驚愕させた真実とは何でしょうか。