布施の心がけ2|仏教の教え
前回(布施の心がけ)に続いて難陀のお話です。
翌朝、目覚めと同時に立ち上がり、
たちまちねぐらを飛び出した難陀は、
今までにない熱心さで、施しを請うて回るのだった。
食物を恵んでもらうためではない。
空腹も忘れて彼女は、お釈迦さまのましますこと、
その法の尊いことを説いて回った。
だがだれ一人として、彼女の言葉に耳を傾ける者はない。
皆彼女の熱気に気押されるが、
変な物乞いが来たとしか言いようのない顔で、断りを浴びせるばかりだった。
だが難陀には、ひるむ心は毛頭起きなかった。
そしてついに、ある一軒の戸をたたいた時、
覗いたふくよかな顔は、どこか懐かしい香りのする高齢の婦人であった。
老婆はにこやかに好ましい様子で難陀を見つめ、熱心な一言一言に聞き入った。
ひととおり話を聞き終えると、おもむろに部屋へ戻り、
心ばかりの施しを、難陀の掌に託したのである。
難陀は天にも昇る気持ちで、恭しく礼を告げると、足早に油屋へと向かう。
今晩の法座に、今なら間に合うに違いない。すでに陽は西に傾きつつあった。
老婦人から施されたわずかな金を手に、難陀は息を切らして油屋を探している。
仏陀のましますこと、その説法の尊さを無我夢中で説いて回るうちに、
こんな不案内な土地まで来ていたのだ。
すでに陽は傾き、お釈迦さまのご説法には、もう間がない。
行き交う人に何度か尋ねながら、一軒の小作りな油屋に行き着いた。
そっと店をのぞき込むと、いかつい風貌の店主が、油を器から器へ移し替えている。
店で買い物をしたことがない難陀は、"あの……"とささやくと、
主人が気がついて愛想よく近づいてきた。
難陀は伏し目がちに、
「あの……一灯分の油が欲しいんです」
か細い声で告げ、握りしめた拳を広げた。
にこやかな店主の顔が曇った。
「残念だが、
それでは足りないな。油をあげるわけには……」
お金を出しさえすれば、油をもらえるとばかり思っていた難陀は落胆した。
だが、ここであきらめることはできない。
油屋の顔を凝視して懇願した。
「どうにかならないでしょうか。
今日一日求め歩いて得たお金なんです。
どうか……」
店の土間に膝をつき、頭を下げたが、主人はまだ渋っている。
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さて、この後は、どうなるのか??
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