布施の心がけ3 長者の万灯よりも貧者の一灯|仏教の教え

前回(布施の心がけ2)、前々回(布施の心がけ)に引き続いて難陀の話をしています。

さて、「布施」の話の続きです。
お釈迦さまの話に感動した貧しい少女の難陀(なんだ)は、
ぜひ自分も布施をしたい、と懸命に努力し、
わずかなお金を手にすることが出来たのでした。

これで会場を照らす灯火の一灯分の油を買おうと油屋に走るも、

お金が足りませんでした。

・・・・・・・・・・

「どうにかならないでしょうか。
 今日一日求め歩いて得たお金なんです。どうか……」

 店の土間に膝をつき、頭を下げたが、主人はまだ渋っている。

「見てのとおり、うちも貧しい商いなんだ。
 分けてやりたいのはやまやまだが、お金がないのでは仕方がないよ」

「無茶は承知です。
 お金が足りないなら、できることを何でもさせていただきます」

そこまで言って、ふと難陀は束ねた黒髪に手をやった。
薄汚れてはいるが、
“あんたの髪は、黒くてしなやかだね。売ればいい値がつくよ”
と以前だれかに言われたのを思い出したのだ。

「もし、この髪が足しになるのなら、今すぐ切って差し上げます。
 どうか、油を分けていただけないでしょうか」

なお懸命に頭を地面に擦りつけた。
店主は依然として承知しないようだが、難陀から何かを感じ取ったのであろう。
しばし沈黙した後、柔らかい口調でこう尋ねてきた。

「なぜ、そこまで熱心に油を求めるんだい?
 一体、何に使うの?」

難陀は顔を上げ、昨日、初めてお釈迦さまのご説法にあったこと、
その教えがだれにでもかかわりの深い、大切なことであること。
そしてその教えをお説きくださる仏陀に、灯明を布施したいのです、と訴えた。

じっと聞いていた油屋は、

「釈迦牟尼(しゃかむに)というお名前は私も聞いたことがあるよ。
 だが、そんな大切なことを教えていられる方とは知らなかった。
 灯火を施したいのだね──分かった。私も一緒に布施させてもらおう」

と、手際よく油を容器に分け、捧げ持って彼女に手渡した。
あまりのことに難陀は、一瞬戸惑ったが、事態をのみ込むと、
パッと心が明るくなった。

心から店主に礼を述べ、恭しくその油を押し頂いて通りに飛び出した。
西の空には太陽が、すでに半身を沈めていた。

長者の万灯よりも貧者の一灯 心こそ大切

翌朝、精舎では、仏弟子の目連(もくれん)が灯火の後始末をしていた。
大方の火は油が切れて消え去ったが、

中に一つだけ、夜明けを迎えてもなお、明々と燃える灯明があった。

目連は道具で覆って消そうとするが、一向に消えない。

"これはどうしたことか"

不審を感じて、釈尊にお尋ねした。

「昨夜の灯火の中で一つだけ、
 依然として煌々(こうこう)と燃え続ける明かりがございます。
 そればかりか、いくら消そうとしても消える気配がございません。
 これは一体、どうしたことでしょうか」

その時、釈尊はこう言われたという。

「それは難陀という女乞食が布施した灯火である。
 その灯はとてもそなたの力では消すことはできない。
 たとえ大海の水を注ごうとも、その灯は燃え続けるであろう。
 なぜならその灯こそは、一切の人々の心の闇を照らそうとする、
 海よりも大きな広済(こうさい)の心から布施された灯であるからだ」

布施の功徳は決して、量の大小によって決まるものではない。
その心こそ大切なのである。

「長者の万灯よりも貧者の一灯」

とお釈迦さまは教えられている。

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