お悩み
「親は、自分に冷たかったし、就職して一人暮らしを始めた時も、すごく不安だったけど、助けてくれなかった。結婚しても夫は仕事ばかりで、何も家の子と手伝ってくれない。どうして自分ばかり、いつも一人なんだろう」
お答え
この相談をくださったのは30代の女性のかたです。
私が「してくれなかったことでなく、してもらったことは、ひとつもないですか」と尋ねても、
「ないことはないけれど……他の人はもっとしてもらっている」
と言われます。
そこで私は、ノートを取り出し、真ん中に線を引いて、「してもらえなかったこと」の欄と「してもらったこと」の欄をつくり、その方に聞きながら書きこんでいきました。
「今の生活は誰が支えてくれていますか」
「はい、主人です」
「子供のとき、看病してもらったことは?」
「よくありました」
「あなたに好意を持ってくれた方、同性でも異性でもありましたか?」
「はい」
「子供さんが生まれてきた時どう思いましたか?」
「うれしかったです」
「今でもですか?」
「もちろんです」
このように、「してもらった」欄には書ききれないほどの項目がでてきたのです。
ノートを指し示しながら、
「たくさんの方に支えてられてきたんですね、あなたは全然、一人じゃないですよ」
と励ますと、
「そうですね」
とてもにっこりと微笑まれました。
この女性の方は、「してくれなかった」ことばかりを見てしまい、実はたくさんの人に支えられていることを見ようとしていなかったのです。
仏教では、
「恩を知るは大悲(だいひ)の本(もと)なり」
と教えます。
恩を知ることが、本当の幸せへの第一歩ですよということです。
恩というと古めかしく感じるかもしれませんが、「お陰(かげ)」ということです。
お陰の陰とは、目に見えないものということです。
私たちは、気がつかないさまざまな人や物にも支えられて、今があります。
自分がいろいろな人や物に支えられていることを知れば、「ありがたいな」「うれしいな」という感謝の心がわいてきます。
だからまず、自分が支えられていることを知ることが、あなたが感謝に活かされる幸せな人生の第一歩です。
自分は何もしてもらっていない、あの人は自分に何もしてくれないと不平、不満の心が出てきたときは、心を落ち着けて、自分が受けている支えを数えてみましょう。
職場で同僚が励ましてくれた。
夫ががんばってくれている。
両親が自分を心配してくれている。
子供の笑顔に支えられている。
などなど、必ず見つかるはずです。
支えられていることを見つけることができればできるほど、ありがたいなと感謝の気持ちになってきます。
それが、苦しいことがあってもがんばろうという原動力になります。
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