お悩み
20歳も年下の上司から厳しく指示されるのが、情けなくて、つらいです。
お答え
「勝ち組」「負け組」という言葉があります。
最近では、「相手を負かして勝ちさえすればいいんだ」と、やたらと勝ち負けにこだわって意地を張ったり、相手を傷つけたりする風潮があります。
議論に勝つ、腕力で勝つ、知識で勝つ――。どうでもいいことでも、勝ちにこだわる人がいます。「自分の強さを見せつけたい」という自己顕示欲に振り回され、尊大な態度をとってしまうのです。
逆に、相手に頭を下げたり、謝ったりせざるをえない立場の人もいます。そういう人は、相手の言うことを聞いてしまうと、「自分は負けた」「自分は弱いダメな人間だ」と、自分を責めて落ち込んでしまいがちです。
でも、負けたり、勝ちを相手に譲ったりするのは、弱いからだとはいえません。「強いから負けられる」ということも往々にしてあるのです。
50代の男性からこんな相談を受けました。
前の会社が倒産して再就職しましたが、そこでは新入社員と同じですから、20歳も年下の上司から指図されたり、厳しく言われたりするそうです。それが悔しくて情けなくてつらいと言われるのです。
長引く不況の中で、こういう思いをされている男性は多いと思います。
「何のために、そこまで忍耐されるんですか」
と聞いてみました。
「自分一人ならここまでしないけど、家にまだ高校生の子供がいるんですよ」
「立派なお父さんですね。家族のために、20歳も年下の人に頭を下げられる。本当に立派で、心の強い方だと思います」
と男性を励まして、こんな歌をご紹介しました。
「花を持つ 人から避ける 山路かな」
一人しか通れない狭い山道で2人が鉢合わせになりました。一人は何も持っていませんでしたが、もう一人は両手いっぱいのきれいな花を抱えています。
こんな時、「お先にどうぞ」と道を譲ることができるのは、両手いっぱいの花を抱えている人です。
もし「俺が先だ」「いや、俺のほうが先だ」とぶつかり合ったら、大事な花が散ってしまうからです。だから、大事な花を守るために、笑顔で「お先にどうぞ」と道を譲ることができるのです。
意見が衝突した時、争いになった時、意地の張り合いをやめて譲ることができるのは、守らなければならない大切な花がある人です。
「年下の上司に頭を下げるのは、あなたが弱いからでも劣っているからでもないのですよ。家族という大事な花のために、頭を下げられる心の強い方ですね」
と励ますと、その男性は涙ぐみながら、
「そう言ってもらえるとうれしいです」
と答えてくださいました。
この男性の場合、大事な花は家族でした。
私たちも、それぞれに、守りたい大事な花を持っているのではないでしょうか。そのために、忍耐しなければならない場面に出くわすことは多々あります。
例えば、どうしてもやりたいことがあって、その目標に向かって、若い人に交じって一から勉強している人もあるでしょう。姑からきつい言葉をかけられるけれど、笑顔で返事をしなければならない時もあるでしょう。
仏教では忍耐のことを「忍辱」(にんにく)と教えられ、お釈迦さまは、善いタネまきの1つとして勧められています。
ぐっと耐えて、相手に譲れる人は、本当の心の強さを持った人なのです。
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