お悩み
ひとの悩みを聞いたとき、うまい言葉が出てきません。
お答え
お釈迦さまは、
「『誰も自分のことを分かってくれない』と、皆、苦しんでいる」
と言われています。私たちは、苦しいことや悲しいこと、つらかったこと、頑張ったことを、誰かに聞いてもらいたい、知ってもらいたいという強い願望を持っています。
自分の悩みを誰にも分かってもらえないと、それだけで心は重く沈んで落ち込みます。逆に、自分の苦しみや悩みを打ち明けて相手に受け止めてもらえると、それだけで「救われた」と心が軽く楽になります。
「相手の話を聞く」ということは、相手に「あなたの気持ちよく分かります」という共感を伝えることになるのです。
その共感が相手に伝わると、極端な話、自殺しようかどうかと迷って苦しんでいる人にでも、頑張ろうという生きる勇気を与えることができるのです。
では、私たちはどうしたら、「あなたの気持ち分かります」という共感のメッセージを伝えることができるのでしょうか。
「うなずく」ということについてはすでにお話ししましたが、さらに、もう一歩進んで、とても効果的な、受け答えのコツをお話ししましょう。
それは、相手の話の出来事や事実ではなく、相手の気持ちに注目して、その気持ちに対する共感のメッセージを伝えるということです。
例えば、友達が「昨日残業で寝るのがすごく遅かったんだ」と言ったとします。
それに対して、あなたが「へー、何の残業だったの」とか「何時まで会社にいたの」と聞いたとします。すると、「在庫整理……」「夜中の一時まで……」と、ここで会話がストップしてしまいます。これでは、相手の気持ちを受け止めたとはいえません。
なぜなら、その友達は、残業の内容や、何時まで会社にいたかをあなたに知ってほしいわけではないからです。「寝不足で大変なんだ」という気持ちを分かってほしくて話をしたのです。
それでは、こんな時はどう反応すればよいでしょうか。
「大変だね。体調は大丈夫?」と相手を気づかう言葉をかけるのがよいのです。
すると、「自分の大変さを分かってくれた」とうれしい気持ちになります。特に親しい人だったら、「そんな中、会ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えると、相手はよりうれしい気持ちになります。
「最近仕事を変えようと思っているんだ」と言われたら、「辞めてこれからどうするの?」と聞き返すのではなく、「何か嫌なことでもあるの」と聞くのがいいですね。
嫌なことがあるから、今の仕事を辞めようと思ったわけです。それをあえて、あなたに語ったのは、別の仕事をあっせんしてもらおうと思ってのことではありません。その嫌だった気持ちを聞いてほしかったからです。
子供がお母さんに「こないだ、跳び箱を跳べるようになったんだよ」と言うのは、お母さんに褒めてもらいたいからですね。
この場合は、「へー、よかったね」とさらりと答えるのでなく、
「頑張ったね。跳べた時、うれしかった?」
と、跳べた時の感動を一緒に共感すると、子供は喜びます。
「相手の気持ちを思いやって聞く」ということを心掛けることで、目の前の人を幸せにすることができます。
自分から何か新しい話題を提供したり、何か説得力のあるアドバイスをしたりするよりも、ずっと効果的なのです。
相手の言葉に込められた「分かってほしい」という気持ちを受け止めて、そこに一言添えていくと、「自分の気持ちを分かってくれた」と、相手は心の底から救われた気持ちになります。
そうすれば、あなたはその人にとって、なくてはならない存在になるのです。
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