職場にどうしても嫌いな人がいる


 

お悩み

 職場にどうしても嫌いな人がいます。生理的にイヤとかいうのではなく、「この人わざとなんじゃないか?」というくらい本当にひどいことを言ってくるのです。
 周りのみんなは、「あー、あの人はああいう人だからね」とうまく付き合っているようですが、私はどうしてもそれができません。
 こんな人とどうやって仕事をしていけばいいのでしょうか。

 

お答え

 相手の言動を受け入れがたいときがあります。
 どうして、この人はこんなことを言うのだろうか? どうして、こんなことをしてくるのだろうか? 理解に苦しむことがあります。

 特に、腹の立つことをされたとき、相手の行動が理解できないと、あの人は性格がゆがんでいるのではないかと、相手の人間性のせいにして、その人を強く憎んでしまうことがあります。

 そんなとき、いったん、自分のことは横において、相手の立場に立って考えてみると、その人の行動の理由が見えてくることがあります。

 その人の行動の理由が分かれば、自分も同じ立場なら、同じことをしたかもしれないと、怒りや責める気持ちをやわらげることができるものです。


 こんな話を聞いたことがあります。

 ある装置の制作工場で働くMさんは、5人ほどの従業員のチームリーダーをしています。
 もともとMさんもいち従業員だったのですが、その前のMさんのチームリーダーをつとめていたHさんが退職したことをきっかけに、仕事ぶりが買われてリーダーになったのです。

 Mさんの会社では、常に作業の効率化が求められていました。
 チームの責任はリーダーに問われ、「今月はこれだけ作れ」という目標が課されるのです。

 ですから、リーダーはどうしても、従業員にプレッシャーをかけてしまいます。

 Mさんは、自分がいち従業員として前のリーダーHさんのもとにいたときは、仕事帰りにはHさんの悪口ばかり言っていました。
 わざとみんなでHさんのことを無視したこともありました。

 ところが、Hさんが退職して、自分がリーダーになってしばらくしたときのことです。
 同僚から、

「言いにくいんだけど、最近、Hさんと同じことをやっているよ」

 と言われて、ガク然としたそうです。

「これまで、Hさんのことを悪い人だと思っていたのだけど、Hさんもやりたくてやっていたわけではなくて、この立場につくとどうしても、そうなってしまう。だから、Hさんに文句ばかり言っていたことが、とても申し訳なかったと思いました」

 と語ってくれました。


 いち従業員の視点で見れば、「もっと早くしてください。どうしてできないんですか」と言われると、こっちだってがんばっているんだし、そこまで言うことないだろうと腹が立ちます。

 ついつい、なんて冷たい人なんだろう、自分さえよければいいのかと、相手を責める気持ちになってしまいますが、相手の立場に立って考えてみると、

「自分も同じ立場だったら、同じことを言ったり、やったりしただろうな」

 と相手を理解できることがあります。

 相手の立場が理解できると、あの人があんなことを言ってくるのは、あの人の人格の問題ではなくて、あの人の置かれた環境がそうさせるのだなと分かります。その人自身をうらむ気持ちが、やわらぎます。


 親鸞(しんらん)が語ったことをまとめた『歎異抄(たんにしょう)』という本の中で、弟子の唯円(ゆいえん)に、

「わが心の善(よ)くて殺さぬにはあらず、また害せじと思うとも百人千人を殺すこともあるべし」

(私の心が清らかだから殺人という恐ろしいことをしないのではないのだよ。殺してはならないと思っても、百人、千人を殺すこともあるのだよ)

 と話されるところがあります。

 そして、その後に、

「さるべき業縁(ごうえん)の催(もよお)せばいかなる振る舞いもすべし」

(人間とは、そういう縁 <環境、きっかけ> がくると、どんなことでもやってしまうものだ)

 とおっしゃっています。

 立場や環境が変われば、とてもこんなことをしないだろうということでも、やってしまうのが人間なのです。

 

 

 テレビや新聞では毎日、さまざまな犯罪事件が報道されています。「どうして、あんなひどいことができるのだろうか」と思う事件もあります。

 ですが、犯人の生い立ちや環境を詳しく知り、自分も同じ環境や境遇に生まれ育ったならば、同じことをしたのではないだろうか? と問うてみると、絶対にやらないとはとても言い切れない自分だと思い知らされます。


 やりたくないと思っていることでも、そういう環境や立場に立たされると、やってしまうのが人間です。

 相手の言動が理解できず、困ったときは、相手の立場から見てみると、自分も同じ立場なら、同じことをやったかもしれないと相手を理解できるものです。

 

 

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2018年10月02日