お悩み
不幸や災難は自分の行いが原因とのことですが、そんなに悪いことをしているつもりもなく、具体的に何をやめればいいのか分かりません。
お答え
運命を生み出す力となるのが、私たちの行いです。
幸せのタネまきとは、よい行いのことですが、
「では逆に、どんな行いが、不幸という悪い結果を生み出すのですか?」
という質問が、読者からありました。
ここでは、「十悪」(じゅうあく)といわれる仏教の教えを紹介したいと思います。
お釈迦さまは、私たちがおかす悪い行いについて、体と口と心の3方面から詳しく教えられています。
まず、心でつくる悪として、「貪欲」(とんよく)「瞋恚」(しんい)「愚痴」(ぐち)の3つを教えられています。
「貪欲」(とんよく)とは底の知れない欲の心のことです。
お金が欲しい、物が欲しい、褒められたい、認められたいという私たちの欲の心には、際限がありません。
自分の欲を満たすために他人をだましたり、傷つけたり、遺産相続をめぐって親戚同士が争ったりすることは、決して珍しいことではありません。
世界中の戦争、紛争などを見ても、この欲の心が動機になっていることが、多いのではないでしょうか。
その欲がさまたげられると出てくるのが怒りの心です。
仏教では怒りの心を「瞋恚」(しんい)といいます。
あいつのせいで儲けそこなった、こいつのせいで恥かかされたと、欲がさまたげられると、怒りの心が燃え上がります。腹が立つと苦しいですし、冷静さを欠いてしまいます。
電車の中で、肩がぶつかって、お互い頭に血が上り、殺人事件に発展することがあります。ひとたび腹を立てると、前後の見境がつかなくなるのです。
「愚痴」とは、ねたみ、そねみ、うらみの心をいいます。
怒ってみてもかなわぬ相手には、この愚痴の心がわき上がってくるのです。
例えば、自分の会社の社長にどれだけ腹が立っても、どなりつけることはできませんから、怒りはうらみやねたみになります。
自分よりも優れている人をねたんだり、他人の不幸を見てニンマリしたりする心も、愚痴の心です。
考えてみると、私たちが苦しみ悩んでいる時とは、欲しいものが手に入らなかったり、カッと腹が立ってどうしようもない状態であったり、相手をうらんだりねたんだりしている時ではないでしょうか。
底の知れない欲、怒りや、うらみ、ねたみの心が、苦しみを生み出していることは間違いないことですね。
次に、口でつくる悪として、「綺語」(きご)「両舌」(りょうぜつ)「悪口」(あっこう)「妄語」(もうご)の4つを教えられています。
「綺語」(きご)とは、心にもないお世辞を言うことです。
私たちが、お世辞を言うのは、相手のためというよりも、自分が気に入られたいからでしょう。
会社の上司の評価や、近所の評判を気にして、本当はそうは思っていなくても、お世辞を言ってしまいます。自分が儲けたいからと、心にもないことを言って、相手を自分の都合のいいように動かそうとしてしまいます。
「両舌」(りょうぜつ)とは二枚舌ともいわれ、仲のよい人の間を裂いて、仲たがいさせるようなことを言うことです。
これは、多くの場合、ねたみの心が言わせることではないでしょうか。
仲のよさにやきもちを焼いて、ついつい、間に亀裂が入るようなことを言ってしまうことがあります。よくよく気をつけなければなりません。
「悪口」(あっこう)とは、非難や中傷であり、悪口のことです。
気に入らない相手のことは、ことさらに悪いところを見つけ出して、非難します。
相手の態度に腹が立つと、ささいなことでも、とても大きな欠点に見えてしまい、批判してしまいます。
「妄語」(もうご)とは、ウソをつくことです。
ウソをつく動機もまちまちですが、多くの場合、自分の失敗をごまかすためについてしまうのではないでしょうか。
そのまま正直に言って謝れば済むことを、体裁を取り繕って、ごまかしてしまいます。
ウソをつくと、さらにそのウソがばれないようにするために、もっと大きなウソをついてしまうこともあります。
他人の言葉に傷ついた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
逆に、自分が不用意に言った言葉が、気がつかないうちに、相手を傷つけていることもあります。よくよく気をつけなければなりません。
さらに、体でつくる悪として「殺生」(せっしょう)「偸盗」(ちゅうとう)「邪淫」(じゃいん)を挙げられています。
「殺生」(せっしょう)とは生き物を殺すこと。
「偸盗」(ちゅうとう)は他人のものを盗むこと。
「邪淫」(じゃいん)はよこしまな男女関係のことです。
このように、仏教では、不幸や悪い結果を生み出す行いを、10にまとめて教えられています。
私たちの口や体を動かしているのは心です。
心で思わないことは、言ったりやったりしませんから、自分の心の姿をよく見つめていきなさいと、お釈迦さまは教えられています。
いずれも、相手を傷つけ、自分をも苦しめる行いですから、よく気をつけなければなりません。
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