お悩み
親に長いこと言葉で傷つけられてきました。いまでも会うと必ずといっていいほどひどいことを言われます。
高齢なので、もうあの性格は直らないだろうし、人生の終わりくらい良い親子関係でいてあげようと思うのですが、親だから許せないという気持ちもあります。
どうしたらよいものでしょうか。
お答え
現在はストレス社会といわれますが、人と人との関わりの中で、腹が立ったり、イライラで苦しむことも多いです。
もし、カチンとくることを言われても、さらりと流すことができたら、どんなに楽に生きることができることでしょう。
お釈迦さまは、怒りについてどのように向き合えばよいかを、次のようなたとえで説かれています。
あるところに、たいへん怒りっぽい男がいました。ちょっとしたことで腹を立て、あたりちらすので、困った家族は、お釈迦さまのご説法を聞きに行かせたのでした。
お釈迦さまは、それを見透かされたように、
「この世には3通りの人がいる。水に書いた文字のような人と、砂に書いた文字のような人と、岩に刻(きざ)んだ文字のような人である」
と話し始められたのでした。
「水に書いた文字のような人とは、水の上に文字を書いても流れて形にならないように、他人の悪口や不快な言葉を聞いても、少しも心にあとをとどめることもなく、さらさらと手放せる人である。
砂に書いた文字のような人とは、しばしば腹を立てるが、しばらくすると、砂に書いた文字のように、怒りが速やかに消え去る人をさす。
岩に書いた文字のような人とは、しばしば腹を立てて、その怒りを長く続け、怒りが刻み込んだ文字のように消えることのない人をいう。
さて、みなさんはどれに当てはまりますか?」
この話を聞いていた男は、ぎくりとしました。
(おれは腹を立てるといつまでも根に持って、相手を恨んできた、恨めば恨むほど、腹を立てれば立てるほど、怒りや恨みが心に刻まれ消えなくなった。おれは怒りを岩に刻み込んだような人間だ……)
「さて、その怒りで身をこがし、苦しんでいるのは誰だろうか?」
お釈迦さまの言葉が、多くの聴衆を通り越して、直接、男の心に響いてくるようでした。
(ああ、いつもイライラして、周りが信じられず、疑心暗鬼になって苦しんできた。怒りで家族や友人にひどいことをいって傷つけてきたが、結局、それでひとりぼっちになって苦しんできたのは俺だった……)
思わず、男は声をあげました。
「お釈迦さま、私はもう、怒りで家族も自分も傷つけたくはありません。どうしたらよいのでしょうか。どうかお教えください」
すると、お釈迦さまはニッコリほほえまれ、
「怒りのヘビを、口から出すのは下等の人間。
歯を食いしばって、口から出さないのが中等の人間。
胸にヘビは狂っていても、顔に表わさないのが上等の人間である」
「怒りのヘビをぐっとのみこんで、和顔愛語(わげんあいご: 優しい表情と言葉づかい)を心がけなさい」
と「忍辱(にんにく: 忍耐)」のすばらしさを説かれました。
男は、お釈迦さまの教えを大切に実践し、近所でも、あの男ほど、腹を立てない、温和な人はいないと言われるほどになったそうです。
お釈迦さまが「六波羅蜜(ろくはらみつ)」の3つめに説かれた忍辱(にんにく)とは、腹が立つようなことを言われても、怒りの心をなるべく起こさないようすることです。そして、怒りを外に出さないように心がけることです。
では、どうしたら、怒りの心を起こさないようにすることができるのでしょうか。
続けて、お釈迦さまから教えていただきましょう。
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