(1) 懐胎守護の恩(かいたいしゅごのおん)
「懐胎守護の恩」とはお母さんが妊娠してから出産するまでの苦労です。
「悲母、子を胎めば、十月の間に血を分け肉を頒ちて、身重病を感ず。子の身体これに由りて成就す」(父母恩重経)
「母親は子を宿せば、出産までの十月の間に自分の体や血肉を分けて、子供の骨格をはじめすべてをつくりあげてゆく。その激しい作業のため、体は常に重病人のように感ずるが、こうして子供の体が成就してゆくのである」
妊娠すれば、つわりが始まります。男性から見ていても苦しそうですが、中には激しいつわりのため、みるみるやせてゆく女性もあります。食べ物が摂れないのです。妊娠すると体に激しい変化が生ずるからです。
十月十日といいますが10ヶ月もの間、子供をお腹の中で守り育てることは
大変なことです。
釈尊が仰せのように、子供の体はすべてお母さんの体を削ってつくられます。
妊娠すれば、みかんなど酸っぱいものを欲するのが常ですが、体が酢酸(酢)を要求するからです。みかんなどに含まれている酢酸は、カルシウムを溶かす働きを持っています。母は子供の骨格をつくるため、自分の骨の成分であるカルシウムを酢で溶かし、胎児へと運ぶのです。
出産後、骨がもろくなったり、髪がばさばさになる女性も多いと聞きます。
カルシウムでできている、母親の骨、歯、毛髪などが傷んでしまいます。
自分の命を削って子供の体を作って下さるのです。
どんな人であってもこの世に生まれたということは
この懐胎守護の恩があったなればこそ、これに間違いないでしょう。