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心が変われば
世界が変わる
【11月12日号】
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先日、テレビで宮部みゆきさんの小説「火車(かしゃ)」が
テレビドラマ化されて放送されていました。
私は本で読みましたが、衝撃を受けた小説の一つです。
あまり詳しく書くとネタバレになってしまいますが、
非常に印象的なセリフがあります。
「私、幸せになりたかっただけなのに、
どうしてこんな事になっちゃったんだろう……」
これは、借金がかさみ1000万ほどの負債を抱えて
自己破産した若い女性のつぶやきなんですね。
だれも多額の借金を抱えたいと思う人はいません。
それなのにどうして1000万もの借金に
なってしまったのか。
この女性は、田舎に住んでいる普通の女性でした。
それが、都会に出てきて、一人暮らしをはじめ
誰にも干渉されなくなった時に、浪費癖が出てきてしまいます。
家具や洋服をクレジットカードで買い、
支払いが厳しくなると、生活費もクレジットカードから払って
自転車操業を始めます。
それでも、やりくりできなくなると、消費者金融からお金を借りて
クレジットの支払いをするようになり、さらにその返済を別の
消費者金融から借りるというように、あっという間に
借金がふくれあがってしまったんですね。
女性のセリフが表しているように、
借金をしようと思ったわけではなくて、
ちょっと人より良い物を食べたい、いい服が着たい
幸せになりたいという思いが、借金となり、
幸せどころか不幸のどん底に落ちてしまう事になったんですね。
さらに、この女性の自己破産を申請した弁護士のセリフも
また印象的でした。
「金融の事を何も知らないまま、何枚もカードを渡されて
好きにおやりなさい、と言われる。
ちょうど、教習も受けずに車の免許を与えているようなもので
それじゃあいたるところで事故が起きるよ。
それでも自己責任って言うのかい?」
はじめはちょっとした間違いだったのが、
どんどん悪い方へ悪い方へと引っ張られていって、
最後は自分でもどうしようも無くなっていく、
そんな経験をした人も少なくないのではと思います。
仏教に「惑業苦(わくごうく)」という言葉があります。
惑というのは、惑い、迷いということ
業というのは、悪い行い、悪業ということ
苦は、苦しみです。
苦しいから、迷った心が出てきて、悪い行いをしてしまう。
すると悪い結果が返って来て、よけい苦しむので、また迷いの心が起きて、
より悪い行いをしてしまう、それが重なってどんどん堕ちていってしまうという事です。
どうしてこんな事になってしまったんだろう。
と思う事もありますが、すべては自分の行いが生み出したものであり、
ちょっとした悪い行いが、「惑業苦」を重ねて大きな苦しみなるという事なんですね。
「火の車 造る大工はなけれども 己が造りて己が乗りゆく」
という言葉がありますが、
苦しい状態、「火の車」を造る人があるのではなくて、
自分がそれを造ってその車に自分で乗って苦しんでいる
という事を言われているんですね。
その因果の道理を子供に教えないままで学校や社会に出して
「学校の責任」「社会の責任」
というのは、大人としての責任を果たしていないと
火車の弁護士さんに怒られるかもしれないですね。
また「火車」は小説の登場人物だけではなく、
私達の生活にもある事であり、
人生の最後に「火車来現(かしゃらいげん)」と言って
火の車が迎えにくるという事がないよう、
毎日の行いをよく考えてゆきたいものですね☆