八正道 正念の意味とは?仏教の真の集中とマインドフルネス

この記事はこんな人にオススメ
  • 心に迷いのある方
  • 過去に囚われている方
  • 未来の事柄に囚われている方

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念とは今に心を置くこと

仏教の中には、八正道(はっしょうどう)と呼ばれる八つの正しい教えがあります。

その中に、正念(しょうねん)という教えがあります。

まず「念」について知っておきましょう。

念とはパーリ語で、サティといいます。「心のなかで思うこと」を意味します。

念じるの「念」という字は、「今」に「心」と書きます。

これは、「心を今に持ってくる」ということです。

satiは「心にとどめる」「よく気をつける」「心が落ち着いている」というほどの意味である。
例えば、セイロンで小僧が心をとり乱して、あわてて茶碗をわったりすると、師僧は”sati! sati!”(落ち着いて!)といって戒める。
(略 )この語を漢訳では伝統的に「念」と訳し、日本の仏教学界はそれにならっているが、いまの日本語で「念じて」というのとは少しく意味合いを異にする。

引用:『ブッダ最後の旅』(岩波書店)の訳注(第1章、22)

 

我々の心は、いろんなところに囚われています。

「あー、あんなこと言わなければよかった」という後悔は、過去に心が囚われているということです。

また、「あー、明日会社で怒られそうだ」というような心配は、まだ起きてもいない未来に心が囚われているということです。

「念」とは、そのどちらでもない、心を今に置くということです。

過去に囚われることなく、未来に心を振り回されるのでもなく、今に心を置くことが「念」の真の意味なのです。

 

八正道(はっしょうどう)

正念というのは、今に心を置いた正しい在り方です。

「マインドフルネス」という言葉を聞いたことはありますか?

マインドフルネスは、この仏教の正念を現代的な形(瞑想など)で表したものとも言われています。

この記事の冒頭でも出てきた八正道。

八正道は、お釈迦様が初めて説いた教えの中に出てきます。

私たちの苦しみをなくし、幸せに至るのには、八つの正しい道があります。その八つの道を実践していくことを八正道といいます。

それぞれを紹介すると、

・正見(しょうけん)     ありのままに見る知恵の目を養い

・正思惟(しょうしゆい)   欲と怒りと恨みで考えを濁さず

・正語(しょうご)      言葉でものごとを正しくとらえて

・正業(しょうごう)     悪をつつしみ、善を実践せよ

・正命(しょうみょう)    世に貢献できることを喜びとし

・正精進(しょうしょうじん) 恐れず、精一杯 進みなさい

・正念(しょうねん)     とらわれから離れて心乱れず

・正定(しょうじょう)    正しき智慧へと至る道

今回の記事のテーマは、八正道の七つ目に出てくる正念です。

 

正念(しょうねん)の意味

辞書による正念の意味は、下記のとおりです。

デジタル大辞泉「正念」の解説
しょう‐ねん〔シヤウ‐〕【正念】
1 仏語。八正道の一。物事の本質をあるがままに心にとどめ、常に真理を求める心を忘れないこと。正しい思念。
2 極楽往生を信じて疑わないこと。一心に念仏すること。
3 雑念を去った安らかな心。
「十方の仏を礼し奉り―にして慈氏菩薩を念じ奉り給ふ間」〈今昔・六〉
4 本心。正気。
「其の後狂気、―を失ふが如しと云々」〈明月記〉
出典 小学館 デジタル大辞泉について

今回は通仏教的な意味で、上記1意味について説明します。

正念とは、今に心を集中することです。

皆さんは、どうでしょう?

我々は、過去に心を囚われたり、未来に心を患ったりして今を生きているはずなのに、

心が今にない状態ではありませんか?

仏教の教えによる正念は、心の位置を今に取りなおすことであり、

それが、今に心を集中させているということなのですね。

では、この「集中」とは何に集中するということなのでしょうか?

我々が思い浮かべる「集中」は、一つのことに対して没頭することを連想する方が多いのではないでしょうか?

ただ、そのように一点に集中していると周りが見えなくなってしまいます。

一方で

仏教で説かれる正念の集中状態というのは、物事のつながりをたどって全体を見ていく事を指します。

全体を見ながら個を見る。そして個から全体を見る。

これを一如(いちにょ)ともいいます。

このように物事を見ていくことで、自然と心が今にポジショニングされていきます。

そして

御自身が、様々な繋がりの中に存在していることに気付くことになるでしょう。

 

幸せを願う心│四無量心(しむりょうしん)

では、そのような繋がりに気付いた時、

我々は何を見て、何を観じたらいいのでしょうか?

それは四無量心(しむりょうしん)という幸せを願う心の教えです。

慈無量心(じむりょうしん)  相手の幸せを念じる心

悲無量心(ひむりょうしん)  相手の苦しみを抜いてあげたいと思う心

喜無量心(きむりょうしん)  相手の幸せを共に喜ぶ心

捨無量心(しゃむりょうしん) 相手への恐れを捨てる心

この四つの心は、我々の心をより豊かにしてくれます。さらに、各々が見えている世界や景色をより広げてくれます。

これらの心の根っこには、「つながり」があります。

限られた狭くしかみられなかった世界に対して、様々な繋がりを見ていくと、

広い世界の中の1シーンであり、自分もそのシーンの登場人物であること、

そして、自分がここにいるということは、様々なつながりの中で成り立っているということを知らされるのです。

これが仏教の、心を今に置く念なのですね。

そのように物事を見ていくことが、正しい心の集中であり、心の向け方ということです。

 

まとめ

今回の内容をまとめておきます。

念の意味は、パーリ語でsati(サティ)「心にとどめる」

仏教でいう正念の意味は、心の位置を今に取りなおすこと。

マインドフルネスは、仏教の正念を瞑想のかたちにしたもの。

人は皆、必ずつながりの中で生きています。

これまで生きてこられたということは、必ず誰かの何かの支えがあってのことです。

その気づきが、心を今に置く正念であり、正しい心の集中なのですね。

 

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執筆者:岡本一志
一般社団法人全国仏教カウンセリング協会代表 仏教の教えにもとづいたアドバイスをしている 著作に「心がほっとする仏さまの50の話」三笠書房 「心がすっと晴れる仏さまの伝えたかったこと」 など計5冊、累計35万部突破のベストセラー
 

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